比較行動学

授業コード 受講区分 学科 授業期間 履修年次 単位 担当者
231651   心理学科 前期 2・3・4 2 金澤 忠博

授業の主題(テーマ)
ヒューマン・エソロジー(人間行動学)ー人間の本能的側面を理解するー

授業の目標(講義概要)
<人間も動物である>という視点に立つヒューマン・エソロジーのアプローチは、表情をはじめ、対人距離、視線行動、しぐさ、姿勢などことばによらない意志伝達行動(ノンバーバル・コミュニケーション)について多くのことを明らかにし、生まれたばかりの赤ちゃんの行動の理解や、母子関係、仲間関係、異性関係など、対人関係の理解に新たな視点を与えてくれる。講義では、ヒューマン・エソロジーのさまざまな研究対象について、現在までの研究成果や問題点、及び基本的な研究方法について紹介する。

授業計画
1.方法論としての比較行動学(エソロジー)と人間の本能的側面
 行動は系統発生と個体発生という2つのプロセスを経て形成される。比較行動学(エソロジー)では、胎生期から大人に至るまでの行動発達のプロセス(個体発生)ばかりでなく、原生動物から人間に至る行動進化のプロセス(系統発生)をも視野に入れて、人間の行動を理解しようとする。講義では、比較行動学の基本的な概念について説明した後、赤ちゃんの知られざる能力を中心に、ヒューマン・エソロジーが明らかにしてきた人間の本能的認知様式や本能的行動様式について学ぶ。
2.表情のエソロジー
 ダーウィンに始まる表情研究は、イザードやエクマンにより、表情を構成単位に分けて分析するコーディング・システムの開発へと進展を見せた。講義では、喜び・悲しみ・恐れ・怒り・驚き・嫌悪など基本的な表情の起源について学び、コミュニケーション手段としての表情の機能について考える。
3.空間のエソロジー
 対人距離の親密さを反映する基本的な指標であり、接近や回避による個体間距離の調節は多くの動物に共通する最も基本的な社会的行動である。講義では、対人距離の分類や特徴、個人空間(パーソナル・スペース)の特徴、混み合いによるストレスと犯罪、などの話題を中心に人間の空間行動について学ぶ。
4.視線のエソロジー
 母親と赤ちゃんの相互作用は目と目を合わせることから始まるといわれるが、母子関係に限らず、視線行動は私たちのコミュニケーションにおいてきわめて重要な役割を果たしている。講義では、母子の相互作用や大人同士の相互作用における視線行動を中心に、視線行動の特徴や働きについて学ぶ。
5.母子関係のエソロジー
 ボウルビィが精神分析や比較行動学の考え方を取り入れて提唱した愛着理論は、今や母子関係のみならず人間関係の理解に欠かせないものとなっている。講義では、鳥類における刻印付けから、ほ乳類、霊長類、人間における愛着まで、様々な動物の母と子の絆について学び、対人関係の基礎としての母子関係の特徴と発達について考える。

評価方法
出席状況、提出物、期末試験あるいはレポートの成績により総合的に評価する

テキスト
 

備考
授業中に必要な資料を配付する